こうした忠言は、東芝の歴代トップに届かなかったのだろうか。報告書では、不適切な損益改善に関して「田中氏の社長就任後、26年ごろから、残高を増加させない旨の方針が打ち出された」との記述がある。田中氏は問題を認識し、軟着陸させようとしたふしがある。
しかし、現実には今年2月、証券取引等監視委員会から金融商品取引法に基づく報告命令が下るまで、歴代トップは問題の抜本解決に動こうとはしなかった。田中氏は、21日の会見で不正の指示について「ございません」と否定したが、東芝に自浄作用が欠落していたとの批判は免れない。
「内部統制が不十分だった」
田中氏の後任として再建を担う室町正志会長は21日の会見でこう述べ、社内の制度改革を急ぐ考えを示した。手始めとして、社内で「チャレンジ」と呼ばれた高い利益目標の設定をやめ、損失先送りなどにつながる不適切な取引の排除も徹底する方針だ。