家族第4部 「拉致」に裂かれて(4)

娘抱く手すり抜け終わる夢 止まった時間、ぼやける顔

 大阪市の親戚宅に前泊し、3月26日に由美は下関からフェリーで出国した。27日に釜山港から韓国に入国し、帰国は4月1日の予定だった。「もし遅れたら帰国は4月2日になると思う」とも由美からは聞いていた。

 何も連絡のないまま、4月2日が過ぎた。「のんきな子だから、忘れたんかな」。今までにもよくあったことだと落ち着こうとしたが、日に日に不安は募った。

 8日には三重大や大学のゼミ仲間、アパートの大家にも電話をかけた。「由美さんはいませんよ。てっきり、実家に帰省しているかと…」

 入国管理局に問い合わせると、出国履歴はあるが、日本に戻ったという記録はなかった。フェリー会社、旅行会社、外務省と手当たり次第に電話で由美の足跡を追った。3月28日、荷物を置いたまま慶州のホテルを出たところで、由美の消息は途絶えていた。

 新たな事実を知るたびに、目の前が暗くなった。何か事件に巻き込まれたのか。4月10日、悦子は韓国の警察に由美の捜索願を出した。(敬称略)

470人に上る特定失踪者

 北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者を調べている「特定失踪者問題調査会」は平成15年1月に発足した。誕生の背景には、14年9月の日朝首脳会談で曽我ひとみさん(56)が拉致被害者として生存していることが分かったことが関係している。

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