正論

新国立計画は再考できないのか 慶応大学名誉教授・池井優

 こうしてのちに帝国競技場(ライヒスシュボルトフェルト)と呼ばれる10万人収容の大競技場が完成、ヒトラーのもと国家事業として予算に糸目はつけなかった。この大スタジアムを舞台に「ハイル・ヒトラー」の大歓声のなか、総統出席のもと盛大な開会式、閉会式が行われ、秩序だった運営、メディアへの行き届いた対応は各競技への期待、昂奮(こうふん)と相まって世界にナチス・ドイツの栄光を伝える大きな役割を果たしたのだった(『ヒトラーへの聖火』)。

 2008年の北京オリンピックは、中国で開催される初の大会とあって国家を挙げての取り組みとなった。そのシンボルが北京国家体育場であった。通称鳥の巣と呼ばれた奇抜な外観を持つ9万1千人収容のこの建物で行われた映画監督張芸謀(チャン・イーモウ)演出の開会式は3時間にも及び、競技開始に先立って中国の威信を誇示するビッグイベントとなった。この体育場建設の経費は約500億円であった。