浪速風

祇園囃子には深い意味がある

多くの人が参加した祇園祭の曳き初め=12日、京都市下京区(志儀駒貴撮影)
多くの人が参加した祇園祭の曳き初め=12日、京都市下京区(志儀駒貴撮影)

「祇園会」という古典落語がある。一夜にして大金持ちになった江戸っ子が京都で長逗留して祇園祭を見物する。案内の男の「京は王城の地」「江戸っ子なんか所詮、東夷の田舎者」にカッとなって、お国自慢の合戦が勃発する。江戸と京言葉の使い分け、祭り囃子を口で演じるのが面白い。

▶祇園囃子は「コンチキチン」の鉦(かね)の音色で知られるが、それは四条河原町を曲がってからの「戻り囃子」で、八坂神社へ向かう道ではスローテンポの「出鉾囃子(渡り囃子)」が奏される。各鉾、曳山でそれぞれ三十数曲もあるそうだ。5月に亡くなった仏文学者の杉本秀太郎さんは「神遊び-祇園祭について」にこう書く。

▶太笛がカミを誘い、鉦がカミの歩みを容易ならしめ、太鼓がカミの心にときめきを起こさせる。そして「カミとヒトとの別離がもう間近いことを予感している悲しみが、戻り囃子には表現されている」。今夜は宵々々山、そぞろ歩きで聞き比べるのも一興だろう。

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