安保法制公聴会

東京慈恵医大教授・小沢隆一氏「個別的・集団的問わず自衛権行使のためであっても武力行使はできない」

 これによって、憲法9条のもとでは個別的、集団的問わず、自衛権の行使のためであっても、戦争や武力の行使はできないという結論が導かれる。しかしながら、政府はこの解釈を1954年の自衛隊創設に伴い変更した。自衛のために必要な、相当な範囲の実力部隊を設けることは憲法に違反しないというものだ。この自衛隊創設には、1952年の日米安保条約の前文で、日本の、自国防衛への責任への米国側の期待が記されたということが大きく影響している。

 その後は、安保・自衛隊という既成事実の重みによって、一種の魔法にかかったような状態が続いている。私は憲法学者の端くれとして、多くの先達が汗牛充棟さながらに唱えてきた自衛隊は違憲という9条解釈論に学びながら、この魔法の呪縛を解き、憲法9条の本来の意義を究明することに微力ながら努めてきた。この間、国民の命と暮らしを守るのは憲法学者ではなく政治家だという声も聞こえたが、これは学者と政治家のそれぞれの役割の違いをわきまえず、てんびんにかけるミスリーディングな言葉だと思う。学者はあくまでも学術の立場から社会や政治に対して意見を提出するものだ。日本学術会議が作成した、科学者の行動規範は、科学者は社会のさまざまな課題の解決と福祉の実現を図るために、政策立案決定者に対して、政策形成に有効な科学的助言の提供に努める。科学者は、公共の福祉に資することを目的として研究活動を行い、客観的で科学的な根拠に基づく公正な助言を行うと定めている。この間の憲法学者の違憲論、とりわけ砂川事件最高裁判決の読み方についての意見、また多くの学者が示している法案に対する消極論、慎重論をそのようなものとして受け止めることを、貴院には強く求める。