花形出番です

観世流能楽師・鵜澤光さん(36)(2) 覚悟が要った進路選択

 子方(子役)時代は舞台が好きで、単純に「能楽師になりたい」と思っていました。母(能楽師の鵜澤久)が事前に出演演目を舞い、物語を教えてくれたので、子供なりに戯曲の一端を担う責任感が芽生えた。舞台上の特等席で、能役者それぞれのドラマを見る緊張感にも痺(しび)れました。

 ただ、成長につれ、「好き」だけではすまない現実も分かってくる。男性中心の能楽界で、自分は負けずに能をやる覚悟があるのか。子方卒業後の中学以降、稽古は続けていたものの、その決心がつくまで時間がかかりました。かといって、能楽師以外の進路も思い浮かばなかった。

 高校入学後、能楽専攻のある東京芸大の受験を決め、囃子(はやし)の稽古も始めます。でも、芸大の面接においてすら、将来について聞かれ、「この世界がどんなに大変か、さらに私がやることがどんなに大変か、分かっています。4年間、死ぬ気でやって能楽師になるか決めたい」と言ったほどです。

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