浪速風

新国立無責任競技場

山登りの世界では古くから「進む勇気より引き返す勇気」という。「せっかく休暇を取って来たのに」「ここまで登ったのだから」と無理をせずに、登頂をあきらめる冷静な判断が遭難を防ぐ。格言にならって、この際、引き返す勇気を求めたい。新国立競技場である。

▶奇抜なデザインは難工事を伴い、建設費が膨れあがった。開閉式の屋根は2020年の東京五輪に間に合わない。黒字を見込む完成後の収支計画も甘く、いずれ大規模な改修が必要となる。肝心のデザインも私見だが、規模縮小で躍動感が失われ、頭や手足をすくめたカメにしか見えない。

▶新聞各紙もそろって見直しを主張する。なのに有識者会議はあっさり計画案を了承してしまった。有識とは「学問があり見識が高いこと」と辞書にあるが、はて? 何か密約でもあるのかと勘ぐってしまう。このまま着工すれば「五輪のレガシー(遺産)」ではなく、メンツと無責任の記念碑となるに違いない。