依田家住宅の「なまこ壁」後世へ 保存目指しNPOが募金活動 静岡

 松崎町にある県指定文化財「依田家(よだけ)住宅」が競売にかけられる見通しとなり、NPO法人「伊豆学研究会」(伊豆の国市)が購入に向けて募金活動を行っている。依田家住宅は、町の伝統工法「なまこ壁」の代表的建造物で、所有者が代われば解体されることもある。同研究会は、目標額1億円を集めて住宅を購入する計画で、歴史的景観の保存と地域活性化に役立てたい考えだ。

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 白と黒の模様が特徴のなまこ壁は、防火や保温を目的に、平瓦を斜め格子状に貼り付けてしっくいで塗り固めて造られている。温泉街と住宅街が混在する町内は、なまこ壁の民家が多く集まっており、情緒豊かな街並みが形成されている。

 中でも、江戸時代に製糸業や回船業で栄えた依田家の住宅は、築300年以上で最も古いとされ、母屋と離れ、3つの蔵は全面なまこ壁で仕上げてある。昭和36年からは、依田家の親族が住宅を改装して「大沢温泉ホテル」として旅館業を営んできたが、経営難で昨年6月に休業。現在は抵当権つき物件となり、競売の準備が進められている。

 こうした中、伊豆地域の文化財保存に向けて活動する同研究会は、昨年11月から依田家住宅を購入するため、募金活動を開始。橋本敬之理事長(63)は、「指定文化財であっても、所有者が代われば解体されることもある。町のシンボル的な建物を失えば、他のなまこ壁にも影響しかねない」と危機感を抱く。

 同研究会の調査によれば、町内に残るなまこ壁は現在約190軒で、10年前と比べて約20軒減っているという。なまこ壁を維持する意思のある所有者はこのうち半数ほどだといい、その背景について橋本理事長は「所有者の高齢化や後継者不足、維持管理費の負担が大きな要因となっている」と指摘する。

 依田家住宅の保存をめぐっては、これまで町内有志らが町に買い取りを求める要望書を提出したが、負債額の大きさなどを理由に町は買い取りを断念。募金額については、6月末現在で200万円ほどに留まっており、橋本理事長は「競売までもう時間がない。厳しい状況だが、松崎の歴史的景観を守るために何とかしたい」と支援を呼び掛けている。

 同研究会は、競売に参加して落札できない場合は、出資者に返金する。取得できれば、町と管理方法を検討した上で一般に開放し、観光資源として活用する方針だ。

 寄付に関する問い合わせは、同研究会(電)0558・76・5088。

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