戦後70年 東北の記憶

男鹿脇本事件(下)守れていなかった海岸線

◆拉致犯も秋田から…

拉致事件の実行犯も秋田から入っていた。蓮池薫さん、祐木子さん夫妻を拉致したとして国外移送目的略取容疑で国際手配されているチェ・スンチョル容疑者は、45年に男鹿市の海岸から密入国した。チェ容疑者の配下工作員は、大韓航空機爆破事件で使われた旅券の入手に関わっていた。

拉致被害者の支援組織「救う会」の西岡力会長は「男鹿脇本事件は氷山の一角。警察や海上保安庁、防衛庁(当時)が情報を共有して海岸を守っていれば拉致もテロもなかった」と指摘する。

男鹿脇本事件の元被告は韓国への強制送還を免れ、関西で会社を経営したり、詩人として活動してきた。平成14年に出版した詩集のプロフィルには秋田での逮捕歴が書かれ、事件を題材にしたこんな作品が収録されている。

「撃つぞ! 兵士の甲高い声が暗黒の海岸線に鳴り響いた」「咄嗟(とっさ)に僕は海に飛び込んだ」「あの日から 僕はまだ泳ぎ続けている 波に洗われながら もう二十年も」(渡辺浩)

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