延焼を最小限にとどめ、煙を遮断することができたのは、2003年の韓国大邱市の地下鉄放火事件や04年のマドリードの列車爆破事件の教訓を経て、車両間のドアや天井、座席などの素材改良を進めてきた成果でもある。
事件は未然に防げなかったか。JRは3キロを超えるガソリンなどの持ち込みを禁じているが、容疑者は約10リットルのポリタンクをリュックサックに入れて乗車した。
発見には空港並みの手荷物検査が有効だろうが、東海道新幹線は1日約42万人の乗客を運ぶ。一人一人の検査を実施すれば長蛇の列を生み、現実的ではない。乗客の利便性と100%の安全を両立させることは極めて困難だ。
当面は乗務員による見回りの強化や防犯カメラの増設、集中管理を進めたい。五輪など厳重警備の実施期間には警察官、警備員を増強する「見せる警備」も必要だろう。爆発物や可燃物を機械的に検知できるゲートシステムの開発や、探知犬の育成などにも効果を期待したい。
いずれも一般乗客の理解を必要とする。今回の事件では乗客同士の避難誘導などが被害の拡大を防いだ。乗客一人一人の目と行動に期待をこめて、普段から緊急時の行動について協力を求める車内アナウンスを徹底してはどうか。