浪速風

「防ぎようがない」

「安全神話」という言葉は安易に使いたくないが、新幹線だけは別と思っていた。開業から半世紀、駆け込み乗車しようとして扉に挟まれ、引きずられて死亡した事例以外に乗客の死亡事故はない。地球上で最も安全な乗り物といって過言ではない。日本の誇りだったが、これは防ぎようがない。

▶走行中の車内で男が油のような液体をかぶって焼身自殺した。巻き添えで女性が亡くなり、20人以上が重軽傷を負った。あらゆる危険を考慮して安全システムを構築してきた鉄道技術者も想定外だろう。大事故には前兆となるヒヤリ、ハットがあるとする「ハインリッヒの法則」にもあてはまらない。

▶危険物の持ち込みを禁止する規則があるが、手荷物検査はない。東海道新幹線だけで1日平均42万余人が利用するのに、飛行機のような検査は現実的ではない。せめて目に見える警備を厳しくして、乗客同士が周囲に気を配るしかない。テロの不安がよぎって暗澹(あんたん)たる思いがする。