もともと中国共産党は日中戦争の中で「抗日民族統一戦線」という民族主義的スローガンを前面に出し、「日本軍国主義に屈服した民族の裏切者である国民党」を打倒して政権を取った政党である。中国共産党は侵略者を打倒した中華民族の英雄という教育を受けた国民は、共産党が民族主義を鼓吹することに違和感を覚えない。
責任転嫁理論は国民の敵愾(てきがい)心を煽(あお)って国民の不満を外敵に向ける国内向けの人気取り政策であり、戦争することが目的ではない。もし、戦争に負ければ政府の人気は地に堕(お)ちることになる。
したがって、責任転嫁理論がうまく機能するためには、(1)軍事衝突が発生しても負ける可能性がない(2)積極的な対外進出に正当性がある-という条件が必要である。
(1)の条件を満たすためには、軍事強国と対決することは避けなければならない。(2)の条件を満たすためには、外国を侵略するのではなく奪われた中国固有の領土を回復するという理屈が必要になる。