正論

南シナ海めぐる米中角逐の背景 東京国際大学教授・村井友秀

 最近の南シナ海における米中の対立を(1)中国はなぜ南シナ海へ進出するのか(2)米国はなぜ中国の南シナ海進出に反発するのか-という視点から考察する。

 ≪国内向けの人気取り政策≫

 近年になって、中国が積極的に国外で軍事力を行使する目的は、深刻化する国内矛盾によって高まっている共産党に対する国民の不満を国外に転嫁するためである。

 国内矛盾を国外に転嫁する責任転嫁理論は、高度な教育を受け豊富な情報を持っている国民が多数を占める国ではうまく機能しない。しかし、中国人は国外からの情報を遮断され、多くの国民は高等教育を受ける機会に恵まれていない。したがって、中国は責任転嫁理論が機能する国家である。

 資本主義経済を拡大する共産党という根本的な矛盾を、中国共産党は資本主義や共産主義を超越した民族主義という概念を前面に押し出して解決しようとしている。