日航機墜落事故から30年 「パパの柿の木」を絵本に 夫を亡くした大阪の女性が制作

 「そんなときでも『パパがいてくれたら』って思っているんです。まだ、夫の死を信じていなかった」

 正勝さんはひつぎに納められて自宅に戻ってきた。遺品が1つずつ入れられたビニール袋をあけるたびに血と煙の臭いがした。その中にメモがあった。

 「まち子 子供よろしく 大阪みのお 谷口正勝」。激しく揺れる機体の中で、懸命に書いたのであろう震えた筆跡。座席に備え付けの紙袋に書かれていた。運転免許証とともに、ズボンのポケットに入れられていたという。血がにじんだ遺書を見てはじめて、夫の死を現実と感じた。

 家族の悲しみを癒やしてくれたのが柿の木だった。

 あの年の秋、初めて実をつけた。仏壇に供えてから3人で食べた。「思ったより甘いね」。夫は、こうやって柿を食べる息子たちの姿を見たかっただろうな。そう思うと涙がこぼれた。

 柿の実は正勝さんから家族へのプレゼントであり、「がんばれよ」というメッセージにも思えた。泣いてばかりだった毎日から、前を向くきっかけになった。

 「箱入り奥さん」とちゃかされるほど正勝さんに大切にされ、世間知らずだったが、アパート経営を始め、宅地建物取引主任の資格も取って生計を立てた。

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