激闘の地・硫黄島はいま(中)

悲しき残骸 大砲の向きが物語る絶望

海に向けられた大砲

 山をさらに上がると、まっすぐにのびる大砲が目に入る。真っ赤にさび付き、コンクリートの囲いも崩れ落ちており、長い時間が経過しているのは一目瞭然だ。しかし、砲身は今もまっすぐ海岸に向けられている。

 看板には「英国アームストロング社製造 大阪山1番砲」と書かれている。砲身には銃撃や砲撃を受けてえぐれた痕がある。島で遺骨の収集などを行う「硫黄島協会」の男性は「砲身に不発弾が残っているのは、世界でここだけといわれている」と教えてくれた。砲そのものが戦闘の激しさを語る生き証人となっているのだ。

 一方、男性は「この砲は(米軍の)上陸地点とは違う場所を向いている。戦う前はどこから上陸してくるか分からなかったからだが、ほとんど活躍する機会はなかったのではないか」と話した。

 こうした大砲は、米軍が星条旗を立てたことでも知られる、島で最も標高が高い摺鉢(すりばち)山にもある。この大砲は「摺鉢山水平砲」とも呼ばれ、海軍が設置したが、こちらもほぼ活躍することはなかったのでは、とみられている。

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