「生世話物(きぜわもの)(庶民の生活を写実的に描く狂言)ですから、(粋で軽やかな)江戸弁の流れを大切にしなければいけないのではないでしょうか」
7月3日、歌舞伎座(東京・銀座)で初日を迎える「七月大歌舞伎」の昼の部で、人間国宝の坂東玉三郎(65)が10年ぶりに、お富与三郎で知られる「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」のお富を演じる。13回目と手に入った役だが、市川海老蔵(37)の与三郎を相手に演じるのは初めて。2人が出会う「見染(みそ)め」、3年ぶりの再会で零落した与三郎が「しがねぇ恋の情が仇(あだ)」の名台詞(めいぜりふ)を投げ掛ける「源氏店」の上演だ。
「これは、ぐれた男(与三郎)の哀愁、色っぽさを見せる芝居です。悲恋だったと嘆く。そんな役の心をいかに音に乗せるか。世話物が一番難しいですね」
夜の部は江戸の落語家、三遊亭円朝の怪談噺をもとにした「牡丹燈籠(ぼたんどうろう)」のお峰。市川中車(ちゅうしゃ)(49)=香川照之=演じる伴蔵(ともぞう)の妻役で、演出も兼ねる。幽霊の手助けで得た大金で人生を狂わされる夫婦を描く。