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三重県が5月に捕獲したツキノワグマを隣接する滋賀県多賀町に無断で放した問題が波紋を広げている。直後に同町内で高齢女性がクマに襲われ重傷を負う事故があり、滋賀県は当初、このクマが襲った可能性があるとみて三重県に猛抗議。その後、現場に残っていた体毛などをDNA鑑定した結果、別のクマであることが分かったが、「そもそも、よその県にクマを放しておいて連絡すらしないなんて、常識では考えられない」と滋賀県は憤る。絶滅危惧種のツキノワグマは捕獲した場合、基本的に放すことになっているが、放獣場所については国も自治体任せにしており、地域で経験や認識に差がある実態も浮かんだ。
(江森梓)
なぜこんな所にクマが…
滋賀県多賀町にクマが出没したのは5月27日早朝。住民の女性(88)が、自宅近くで地蔵を拝んでいるところを襲われ、頬骨を折るなどの重傷を負った。
県自然環境保全課によると、同町を含む鈴鹿山脈の一帯は、ツキノワグマの個体群分布の「空白地域」とされ、周辺ではこれまでクマを目撃したという報告例がほとんどない。同町では過去10年間で、平成25年6月に「県道を横切った」という目撃情報が1件寄せられただけだ。
重傷を負った女性の夫(91)も「生まれてからずっとここに住んでいるが、今までクマなんて見たことも聞いたこともない」と驚いていた。