正論

世界の現実踏まえた憲法論議を 外交評論家・岡本行夫

 安保法制についての政府の説明は、行儀がよすぎて些(いささ)か分かりづらい。一方、これを違憲とする憲法学者や野党の主張は、世界の変化を考慮しない観念論で、現実感覚がない。

 ≪顕在化する自衛行動の必要性≫

 砂川判決が個別的と集団的の区別をせずに国家の自衛権を認めたのは周知のとおりである。しかしその後がいけない。72年に、内閣法制局は「日本に許されているのは個別的自衛権だけで、集団的自衛権はすべて違憲」とした上で、集団的自衛権を「他国に加えられた武力攻撃を阻止すること」と定義した。つまり、「個別的自衛以外のすべての武力行使イコール他国を守る行為」と荒っぽく認定したわけだ。

 因(ちな)みに72年は「非武装中立論」に対する国民の支持が最も高かった年(15・5%、現在は2・6%)であった。海外で起こる紛争が日本人の生命や財産を脅かす事態など考える必要がなかった平和な時代だ。反対論者の違憲論も、40年以上前のこの時代であれば、立派な意見であった。

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