ヒノキや松など寺社の修復に必要な木材を守り育て、森の資源の大切さを伝えていこうと20日、「奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~」(奈良市)で「第6回春日奥山古事の森」のシンポジウムが開かれた。奈良県などからなる「春日奥山古事の森」育成協議会が主催。約270人が参加した。
古事の森とは、日本の伝統的木造建築物の修復や再建に使う良質な木材を育てる取り組みで、春日奥山(奈良市)など全国で約10カ所の国有林に設定されている。協議会が中心となり200~400年かけて森林を育てる計画を進めている。
今回のシンポジウムは、「森が支える『木の文化』」と題して開催。冒頭で春日大社の岡本彰夫権宮司が「奈良では神社などを改修するための松材が不足している。奈良の文化財を守るためには400年、500年先を見据えた木材の確保を考えなくてはならない」とあいさつした。
その後、中西康博県知事公室審議官が「檜皮(ひわだ)がつなぐ奈良公園の森づくり」と題して講演。寺の屋根に使うヒノキの皮「檜皮」について「後継者や技術者が少なく、県内で必要な檜皮はまだまだ不足している。県内の他地域の公有林とも連携していきたい」と話した。
また、照葉樹林の変容やナラ枯れの被害が拡大している春日山原始林の現状にも触れ「古都奈良の貴重な財産である春日山原始林の保全を促すために県民の協力が必要だ」と訴えた。
最後に小森久喜奈良森林管理事務所長が「長い時間をかけて森を育てるという思いを伝承する必要がある」と呼び掛けた。京都府城陽市から参加した小丸恵子さん(63)は「今が日本の木の文化がなくなるかどうかの瀬戸際だと思う。若手の育成、技術の伝承など、私たちに何ができるのか考えたい」と話した。