老朽化した住宅を1棟丸ごとリフォームし新築のように再生する、住友不動産の「新築そっくりさん」が存在感を高めている。建て替える場合に比べて費用を最大で半分に抑えられるなど住宅業界の常識を覆し、今や年間1000億円規模のビジネスに成長した。リフォーム市場は参入企業が増えているが、「提案力」に磨きをかけて競合他社との差別化を図る。
いまや1000億円事業に
「建て替え費用の半額で1棟丸ごとリフォームするような商品をつくれば、売れるのではないか」。住友不動産が新築そっくりさんを売り出したのは平成8年4月。きっかけは、当時の高島準司社長(現在は会長)がその前年の会議で発したひと言だった。
7年の阪神大震災では、築年数の古い住宅の多くが耐震性などで問題を抱えているにもかかわらず、高額の費用などが壁となって建て替えがままならない状況が浮き彫りになった。主力のオフィスビル賃貸やマンション分譲に続く新規事業の育成が課題となっていた中、高島社長には「地震に強く、しかも完全定価制で建て替えをせずに住宅を再生できないか」との思いがあったようだ。