浪速風

ピース又吉さんと太宰治

サクランボをいただいた。この時期に赤く実が熟す、初夏の味覚である。桜桃とも呼ばれる。可憐な一粒を口に含んで、今日が「桜桃忌」であることを思い出した。昭和23(1948)年6月19日、玉川上水に入水自殺した作家の太宰治の遺体が発見された。くしくもこの日は誕生日でもあった。

▶芥川賞候補になったお笑い芸人の又吉直樹さんは太宰ファンを公言している。中学生で初めて読んで衝撃を受けた「人間失格」は、100回ぐらい読み返し、付箋だらけでほとんどの文字に線が引いてあるという。以前住んでいた三鷹市のアパートが太宰の旧住所だったという奇縁もある。

▶又吉さんほどではないが、若い頃に太宰を愛読した。短編「桜桃」にこんなシーンがある。家庭に悩みを抱える主人公が酒場で出された桜桃を食べながらつぶやく。「子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親のほうが弱いのだ」。今ならわかるかもしれない。読み直してみよう。