鉄道ファンの世界も細分化が進んでいる。よく耳にする「乗り鉄」や「撮り鉄」(鉄道写真の撮影)に加え、「車両鉄」「模型鉄」「時刻表鉄」「音鉄」(発車メロディーや車両のモーター音)など、それぞれの分野で究めている人がいる。
だからこそ、その道のファンと謙虚に向き合うことにしている。「たまに分からない分野のことでボロが出たりしますが、無理なく自然体でやっています」
原点は「青春18きっぷ」
「乗り鉄」として印象に残っている列車が快速「ムーンライトながら」だと聞いて、舌を巻いた。
東京と岐阜県の大垣市を結ぶ夜行列車。現在は特急車両を使った臨時列車として繁忙期に運転されているが、座席で夜を明かすのはなかなかしんどいものだ。
学生時代の貧乏旅行でやむを得ず乗る列車というイメージもあるが、「普通や快速列車だけで行く弾丸ツアーが楽しくて…。滞在時間よりも移動時間の方が長いんです。でも距離感が分かる。東京、めっちゃ遠いと思いました」と夜汽車の旅を心から楽しんだ様子。大学生のころは、全国のJR線の普通・快速列車に5日間乗り放題の「青春18きっぷ」を手に、弟とよく鈍行列車の旅を楽しんだという。
東京-大阪間を普通・快速列車だけで移動すると9~10時間は覚悟しなければならない。それでも普通列車にこだわるのはなぜか。
「新幹線と違って、地元の人の姿が見られるし、方言を聞くこともできる。車内の中吊り広告にも地域色があって面白いんです」
乗り鉄を心から楽しんでいることがよく分かる。
癒やし系鉄ドルとして有名になった今でも、「東京で夕方からお仕事です」と言われたら、青春18きっぷで行けるかどうか考えてしまうというから恐れ入る。