政府が、フィリピンでの災害時などに自衛隊を人道支援・災害救援(HA/DR)活動に派遣する際の法的地位を定める取り決めを、フィリピン政府との間で締結する方向で検討していることが15日、分かった。目的はあくまでも自然災害時の協力を円滑に進めることだが、同国での自衛隊のプレゼンスを高め、南シナ海で強引な基地建設を進める中国を牽(けん)制(せい)する狙いもあるとみられる。
取り決めでは、自衛隊の派遣時に持ち込む医療器具や食料などの通関手続きを簡略化するほか、自衛隊員が現地で犯罪や事故を起こした際の裁判管轄権などを定める。取り決めの形態に関しては、日本側は国会承認を必要としない交換公文に両政府が署名する形を想定している。
自衛隊が海外派遣される場合、国連平和維持活動(PKO)であれば国連と受け入れ国が締結した地位協定が自衛隊にも適用される。一方、災害支援を中心とする国際緊急援助活動では協定などを結ぶ時間的余裕がないため、自衛隊が持ち込む装備品リストを受け入れ国政府に提出するなどして対応している。仮に自衛隊員が事故などを起こせば、裁判管轄権について受け入れ国政府との交渉を行わなければならなかった。