平成12年の初舞台以降、いろいろな舞台に出させていただきました。隈取(くまど)り好きでしたので、14年に歌舞伎座で「蘭平物狂(らんぺいものぐるい)」の繁蔵(しげぞう)ができたのはうれしかった。見得も隈取りもできる子役に憧れていたのですが、その気持ちを(中村)錦之助のおじさんが伝えてくださった。この舞台で菊五郎劇団とご一緒し、「(六代目尾上菊五郎のひ孫という)ルーツがあるから」と誘っていただいたことが現在につながっています。
二代目尾上右近襲名は17年1月、「文七元結(ぶんしちもっとい)」のお久役です。初代右近は大伯父、尾上九朗右衛門(くろうえもん)の幼名ですから、縁のあるお名前をいただけた。当時12歳でしたが、役者としてやっていきたいという意識が高まりました。
でも、劇団は最初、怖かったです。お弟子さんたちが職人気質で、緊張感が漂っている。ありがたいことですが、舞台や楽屋での作法をしつけていただきました。
周囲の目を気にしない子供でしたが、15歳にもなると自意識が生じ、声変わりも重なって、思うように芝居ができなくなった。女形の経験もないのに、お姫さまの大役をいただいたときは、お客さまがどんどん引くのが分かり、とてもつらかった。
余計なことも考え、苦しんだ時期、諸先輩に助けていただきました。市川猿之助(えんのすけ)さんのお兄さんにも「どうしたらいいか分からない」とご相談したら、「自分で何とかするしかない」とおっしゃった。以後、自主公演に「一緒に勉強しよう」と誘ってくださるなど、ずっと気にかけていただいています。(談)