亀岡典子の恋する伝芸

名人に聞く 京舞井上流五世家元・井上八千代さん(下)カリスマの四世を目指しつつ自分の舞を作っていく

 --克服されたのは

 八千代 それはやはり四世の舞っている姿ですね。四世は言葉で何か言う人ではなかったのですが、舞に取り組んではる姿を見て、やっぱり舞はいいなあと思ったのです。もちろん、悩んでもやめてしまえない、続けていかざるをえないという状況がまずありましたし、期待してくれた方々を裏切ることにもなります。でも、究極、舞の魅力と祖母の舞姿ですね。まだまだ知らない曲がたくさんあって、もっと舞ってみたいとも思いました。

年に1回舞って自分を試す曲

 --先ほど、時代の変化の中で日本舞踊がどうなるか、というお話が出ましたが

 八千代 舞というのは、今の時代、マイナーな芸能だと思うのです。でも、そのマイナーな舞の世界というものが、ある意味で評価されるべきものやなあと実感したのは祖母の舞でした。

 --八千代さんご自身、エポックになった曲というのは何でしょうか。

 八千代 「珠取海士(たまとりあま)」は年に1回は舞っておきたい曲です。というのは、うちの舞の中で一番しんどい曲だと思うからです。この曲でお稽古したとき膝を痛めたこともありました。私も年齢とともに体力や気力も変わってきますので、年に1回は舞って自分を試すということをしなければならないと思っています。

 --目標はやはり四世の舞でしょうか

 八千代 ライフワークとしては、四世が愛した「虫の音(ね)」が舞えるようになりたいですね。