個人情報の活用と保護の両立を目指す個人情報保護法改正案が衆院本会議で可決され、審議の場が参院に移っている。新たなビジネスを創出するために個人情報の流通性を高める一方、不正な利益を得るための情報漏洩に対して新たに罰則を設けるなど規制も強化する。改正後は小規模事業者も適用対象となることなどから、同法施行時に起きた過剰反応や萎縮効果の再来も懸念されている。
時代に対応
現行の個人情報保護法は平成15年に成立。個人情報の取得目的の明示や安全管理、本人の同意のない第三者提供の原則禁止などを定めた。制定から12年が経過し、IT技術の進展に伴うビッグデータを活用した新産業の創出や情報漏洩事件への対応が求められるようになった。
そのため、改正案では事業者が本人の同意なく利用目的を変更できる範囲について、「相当の関連性のある範囲」から「相当の」を削除し、個人情報の使い道を変えられる範囲を拡大。政府は「電力会社が消費者の利用状況を基に省エネを奨励したり、安否確認サービスを行ったりするのは許容範囲内だ」と説明する。
また、氏名を削除するなどして個人を特定できなくした「匿名加工情報」は、一定の条件を満たせば第三者に提供できることも明記された。5月26日の参院内閣委ではIC乗車券「Suica(スイカ)」に記録された個人情報の活用例が紹介された。政府側答弁によると、利用者の氏名や住所の一部などを削除した上で乗降記録を提供することにより、若者の利用が多い改札口側のコンビニエンスストアには若者向けの商品が配置されるようになる。