正論

日本に浸透する中国の世論戦 東京国際大学教授・村井友秀

 日中関係では、中国政府が自国を階級闘争を卒業し国民と政府が一体化した民族主義国家として行動するのに対して、日本の左派は日本を「市民対政府」という疑似階級闘争が進行中の国家であると見做している。日中対立は、一体化した中国と分裂した日本の対立という構造になっている。この点が中国の対日世論戦(心理戦)が有効に機能するポイントである。

 ただし、表面的には階級闘争のない民族主義国家である中国が、階級闘争があり民族主義が弱い日本に世論戦を仕掛ける形になっている。しかし、日中両国の基本構造を見れば、日本は中流意識を持つ国民が多く階級矛盾の少ない国であり、自然災害その他で社会が不安定になっても、低所得者層による暴動が発生せず、きっかけがあれば一致団結する民族主義を内に秘めた国家である。

 一方、中国では豊かな共産党員と貧しい労働者の格差が拡大して階級闘争の圧力が高くなっており、漢民族と少数民族間の矛盾も拡大して大漢民族主義は不安定である。表面的な日中間の前提が突然逆転する可能性も視野に入れておかなければならない。(むらい ともひで)

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