正論

日本に浸透する中国の世論戦 東京国際大学教授・村井友秀

 ソ連が崩壊し共産主義の正当性が地に堕(お)ちた後、階級闘争史観から抜けられない日本の左派は新しい階級闘争を創り出した。古典的な労働者階級による階級闘争とは異なる形態の、階級に準(なぞら)えた「リベラルな市民」が「反動的な政府」と闘うという疑似階級闘争である。

 日本の左派の歴史をみると、第二次世界大戦以前の日本で左派を弾圧したのは、天皇制に対する脅威であった共産主義や社会主義を排除しようとした軍国主義的な日本帝国政府であった。敗戦によって大日本帝国が崩壊し、日本の左派にとって最大の敵は消えた。民主主義が根付いた戦後の日本では右派も左派も共存できる社会が実現した。

 しかし、戦後の日本の左派にとって自らの生存に最も深刻な脅威を与える敵は軍国主義的な日本の復活である。従って、戦後の日本の左派にとって第一の敵は日本の軍国主義であり、中国の軍国主義ではなかった。

 《進められる左派との共闘》

 他方、歴史的に「一つの山に二匹の虎はいない」と考える中国にとって、東アジアという一つの山にいる日本は中国が生き残るためには屈服させるべきもう一匹の虎であった。特に、中国に屈服することを拒否する日本の右派は打倒すべき敵であった。すなわち、日本の軍国主義と右派を重ねることができれば、中国共産党が主張するように「日本軍国主義は中日両国人民の敵」なのである。

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