翻訳家の長勢了治さん「シベリア抑留」刊行 日露の資料駆使、悲劇の全容に迫る

「戦後生まれでしがらみがないため、自由な立場で研究できた」と話す長勢了治さん
「戦後生まれでしがらみがないため、自由な立場で研究できた」と話す長勢了治さん

 終戦後、数十万の日本人がソ連に連行され、過酷な強制労働で多数の死者を出したシベリア抑留。戦後70年を迎える今年、翻訳家の長勢了治さん(65)が刊行した『シベリア抑留 日本人はどんな目に遭ったのか』(新潮選書)は、長らく不明な点が多かったこの悲劇の全容について、日露双方の資料を駆使して迫る。

 長勢さんは一昨年、原書房から600ページ超の大著『シベリア抑留全史』を上梓(じょうし)。ロシア語力を生かして旧ソ連公文書と日本側の証言を突き合わせ、抑留の実態を詳述した研究書として高く評価された。今回の本は、同書をより一般向けに書き直し、最新の知見も付け加えたものだ。

 シベリア抑留については冷戦時代から体験者の手記などを中心に多数の本が刊行されたが、「肝心のソ連側の資料が利用できず、全体像解明が困難だった」と指摘。確かな研究書は実質的に『シベリア捕虜収容所』(若槻泰雄著)1冊しかないという状況が長く続いていた。「ソ連崩壊後、公文書を使ったロシア人研究者の本が1990年代後半から出始めた。だが日本の研究者の反応は鈍く、日本の方が二周くらい遅れた状況」。日本での本格的研究は、実はまだ始まったばかりだという。