全国の水族館で飼育されているラッコの数が激減している。絶滅危惧種としてワシントン条約で国際取引が規制され、繁殖に向けた取り組みもうまくいっていないためだ。ピーク時の平成8年には、全国の水族館で118頭飼育されていたが、現在は15頭と8分の1にまで減少。海遊館(大阪市港区)に残る1頭も、人間に換算すると80~90歳で、高齢化も深刻だ。愛くるしい姿で一大ブームを巻き起こしたラッコだが、関係者は「このままでは日本の水族館から消えてしまう」と打開策を模索している。 (上岡由美)
■海遊館も8頭→1頭に
「仲間がいないとあまり動かないので、体力が落ちることが心配です」
海遊館で海獣環境展示チームマネジャーを務める地本和史さん(53)はラッコの「パタ」(メス、18歳)を見つめながら話した。
今月28日に19歳の誕生日を迎えるパタ。ラッコの平均寿命は15~20歳といわれており、人間に換算すると80~90歳だ。25年12月に「エレン」(メス、推定24歳)が死亡し、1頭だけになった。
海遊館は平成2年の開館当初からラッコを飼育。国内で生まれたオス3頭から飼育を始め、2年後にはメス4頭も加わって、19年には8頭の「大家族」になった。
繁殖もこれまで4回成功したが、飼育下のラッコは神経質で、親が育児放棄したり、子供の体力不足で育たなかったりと難しく、17年に出産したが2日後に急死。それ以降、赤ちゃんは生まれていない。
■昔は日本にも生息
昔は日本にもラッコが生息していた。江戸時代中期の正徳2(1712)年に寺島良安(りょうあん)によって編纂(へんさん)された日本初の百科事典『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)には、「猟虎蝦夷島東北海中有島名猟虎島此物多有之」と記され、「猟虎(らっこ)が蝦夷島の東北にある猟虎島に多くいる」と紹介。「猟虎」とはラッコのことで、アイヌ語が語源とされている。皮の形から想像し、オオカミのような4本足の動物が描かれている。