「他人の時間」展 「誰か」に寄り添うヒント

「他人の時間」展 「誰か」に寄り添うヒント
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 タイの美術家、プラッチャヤ・ピントーンさん(1974年生まれ)は5年前、滞在制作のためフランス・パリに招待された。しかし彼はパリには滞在せず、ベリーの収穫のため雇われたタイ人の出稼ぎ労働者らとともにスウェーデンに向かい、肉体労働に励んだ。そして毎日、パリのギャラリーのキュレーターに自分がその日収穫したベリーの重さを報告しては、同じ重量の雑多な不要物を「アート」として展示するよう頼んだという。

 ピントーンさんのこのプロジェクトは映像インスタレーション作品「取るより多くを与えよ」として、東京都現代美術館(東京都江東区)で開催中の企画展「他人の時間」で展示されている。展示室にはグランドピアノが1台。彼が2カ月間で収穫したベリーの重量549キロにほぼ相当する。

 グローバル社会のいびつな経済構造を示唆する作品だが、低賃金労働と芸術を「重さ」で置き換える発想は、アートの仕組みそのものへのウイットに富んだ批判に思えてくる。美術館に置かれたグランドピアノを通して、鑑賞者は北欧の森で黙々とベリーを摘み取るタイ人労働者を想(おも)うのだ。

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