長々と引用したが、明確なのは、緒方氏が「押し付け憲法論」を自明のこととしてとらえていることだ。
朝日社説より冷静
ところが、その緒方氏が昭和19年7月まで所属していた朝日新聞は現在、このように主張している。
「天皇主権の下、権力をふるってきた旧指導層にとっては、国民主権の新憲法は『押し付け』だったのだろう。この感情をいまに引きずるかどうかは、新憲法をはじめ敗戦後の民主化政策を『輝かしい顔』で歓迎した国民の側に立つか、『仏頂面』で受け入れた旧指導層の側に立つかによって分かれるのではないか」(5月3日付社説)
春秋の筆法によれば、朝日新聞は自社で主筆まで務めた緒方氏は「天皇主権の下、権力をふるってきた旧指導層」であり、国民の側に立っていないと決めつけていることになる。
「この(現行憲法の)成立過程について問題である、あるいは問題ではないという議論は当然あると思うが、この事実については当然認識しておく必要はあるのだろう」