衆院で安全保障関連法案の審議がスタートしたが、国民にとって分かりにくい論戦が続いている。その一因には「法律論」と「政策論」の混乱があり、「地球の裏側で米国と一緒に戦争する法案」という乱暴な批判の背景にもなっている。これまでの政府答弁などから整理した。(千葉倫之)
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「今、念頭にあるのはホルムズだけだ」。安倍晋三首相は5月28日の衆院平和安全法制特別委員会で、他国領域で集団的自衛権を行使するのは、中東・ホルムズ海峡の機雷掃海が唯一の想定例だと強調した。
野党側は「掃海に行って攻撃されたらどうするのか。日本が狙われる可能性が増える」(民主党の辻元清美衆院議員)などと批判した。
確かに法律上は「戦火飛び交う中での掃海」が可能ととれるが、そこに抜け落ちているのは「政策判断」という要素だ。首相も戦闘中の掃海の危険性を認めたうえで「事実上の停戦合意が成立したが、法律上はまだ不成立」のケースを想定しているとした。そうであれば「集団的自衛権の行使」といっても、国際法をクリアするための形式的な適用といえる。