年金情報流出

「消えた年金」問題再来!? 「漏れた年金」に政権懸念…派遣法改正案・マイナンバー法案に暗雲

 日本年金機構の年金情報流出問題が国会審議にも波紋を広げている。与野党は2日、衆院厚生労働委員会の理事懇談会で、年金情報流出に関する集中審議を3日に実施することを決めた。その影響で労働者派遣法改正案や国民に個人番号を割り振るマイナンバー法改正案の審議は停滞。政権側は再発防止の徹底を訴える一方、年金機構のずさんな情報管理に批判が集中した。

 民主党の高木義明国対委員長は2日の代議士会で、第1次安倍晋三内閣を直撃した「消えた年金記録」問題を引き合いに「今回は『漏れた年金』だ」と批判。また同日の記者会見で「この問題の区切りが付くまで(衆院厚労委では)通常の法案審議はできない」と述べ、集中審議を求めた。維新の党の松野頼久代表も「最大限追及する」と表明。塩崎恭久厚生労働相の監督責任や年金機構の対応を厳しくただす構えだ。

 野党側が集中審議を求める背景には、老後の生活を支える年金問題だけに国民の関心が高く、政権批判の格好の材料になるとの狙いがある。

 しわ寄せを受けるのが審議中の労働者派遣法改正案だ。与党側は衆院厚労委で3日の審議について「午前に年金問題、午後は派遣法」と提案したが、野党に「法案どころではない」と拒否され、集中審議を受け入れざるをえなかった。法案の審議日程は見通せず、成立に暗雲が漂っている。

 個人情報の管理体制について懸念が指摘されるマイナンバー法改正案も同様だ。与党側は2日の参院内閣委員会の理事会で今週中の委員会採決を提案する予定だったが、流出問題で先送りとなった。流出問題が拡大すれば最重要法案の安全保障関連法案の審議にも影響が及ぶ可能性もある。

 菅義偉官房長官は2日の記者会見で「情報保護に対する認識に甘さがあった」と指摘。内閣サイバーセキュリティセンターから年金機構に緊急支援チームを派遣したと発表した。消えた年金記録問題の二の舞を回避するため、原因究明と再発防止の徹底を急がせる。

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