平成22年から、狂言師の茂山逸平さんと「逸青会」という公演を続けています。ジャンルの違う者同士で組むコラボ公演は多々ありますが、「時間をかけ、丁寧な公演を続けよう」と互いに約束しました。
第1回公演は狂言にも歌舞伎舞踊にもある「茶壺」を演じ、2回目以降、狂言にしかない「千鳥」や「樋の酒」を新作舞踊として創作し、舞いました。さらに、書き下ろしの新作舞踊狂言「岐佐(きさ)の鼻」と、段階を踏み、能楽師や舞踊家の枠を取り払い、1つの舞台を作ることを目指しています。
この公演で、僕の踊りの会に来てくださるようになった狂言ファンの方もいて、互いのファン層拡大につながったと思います。伝統芸能界の同世代の人脈が広がったことで視野も広がった。日本舞踊の世界でも、流派を超えた他流試合は僕らの世代では普通のことになりました。
振付家としては外部の舞台も手掛けています。踊るより、めっぽう苦しい。演者やスタッフと信頼関係を構築した上で、何が求められているか考え、観客に寄り添う。蜷川幸雄さん演出の「NINAGAWA十二夜」(17年)や「ボクの四谷怪談」(24年)では、蜷川さんから振りを「違う!」と何度も言われ、良い経験になりました。
踊りも振り付けも究極的には自分を見せること。毎回、葛藤(かっとう)がありますが、良い踊りをお見せすることで、もっと舞踊のファンを増やしたいですね。(談)=6月は歌舞伎俳優、尾上右近さんです。