きのう午前9時59分の爆発的噴火以前に口永良部島を地元以外で知っていた人は、相当の火山通か戦史通ではないか。70年前の4月7日、沖縄へ特攻攻撃に出撃した戦艦大和が米軍機に撃沈されたのは、同島西方沖だった。
▼噴煙の高さは9000メートル超、火砕流が海に達した、という一報に島から遠く離れた東京の小紙編集局にも緊張が走った。全島民が半日で島外避難を完了し、被害が最小限で済んだのは、風向きが幸いしたのと昨年8月の噴火以降、いざ、というときにどうすればいいかを住民も役所も心得て準備してきたからだろう。
▼自然災害に備えるのも有事に備えるのも基本的には同じである。噴火も地震も台風もないにこしたことはないが、「起きないように」と祈っていても忘れたころにやってくるのが災害である。
▼安全保障も同じで、「戦争が起きないように」と祈っているだけで、平和が保てるのならマヤもインカ帝国も滅亡しなかった。戦後70年、日本が戦争に巻き込まれなかったのは、ありがたい話であるが、このまま何もせずに次の10年、20年も大丈夫といえるほど世の中甘くない。