欧州随一の陶芸大国、英国の多様な焼き物は、折に触れて日本人を魅了してきた。そのひとつ、英国伝統の「スリップウェア」は、1920年代に陶芸家のバーナード・リーチとともに渡英した濱田(はまだ)庄司らによって紹介され、その独特の温かみは今ふたたび、日本でファンを増やしつつある。一度は廃れたこの焼き物を再興させた第一人者、クライヴ・ボウエンさん(72)に聞いた。(黒沢綾子)
スリップウェアとは赤土で成形した素地に泥漿(でいしょう)(スリップ)、つまり化粧土で文様を描き、透明か半透明の釉薬(ゆうやく)をかけ、日本の一般的な陶磁器よりも低めの1000~1150度で焼成した焼き物を指す。庶民が日常使う器として親しまれ、ボウエンさんが窯を構えるイングランド南西部、北デボン地方も19世紀まではスリップウェアの一大産地だったという。