信州ジビエもっと食べて! イオンがシカ肉販売へブランド化後押し

 総合スーパー「イオン」は、6月5日から県内の11店舗すべてで、県内産のニホンジカの生肉(冷凍)や加工食品を通年で販売する。野生鳥獣による農林業への被害が拡大する一方、捕獲された野生鳥獣の食肉として活用が期待される中、スーパーでシカの生肉が販売されるのは初めて。「信州ジビエ(野生鳥獣肉)」としてブランド化を図っている県は、「一般の消費者にジビエを届ける流通経路がようやく出来上がった。信州ジビエがごく普通に家庭の食卓に上がるように普及に努めたい」としている。

 ◆流通の仕組み構築

 平成25年度の野生鳥獣による県内での農林業被害額は11億4815万円に上り、そのうちニホンジカの被害は4億966万円を占めた。捕獲や防除対策の強化で被害額は減少傾向にあるものの、依然として高い水準にあり、計画的な捕獲による個体数管理は急務だ。県の第3期ニホンジカ管理計画は年間2万5千~3万5千頭の捕獲目標を掲げているが、捕獲されたニホンジカの9割程度は山中に埋められるなどしており、食肉として加工処理されるのは5%にも満たない。

 県鳥獣対策・ジビエ振興室によると、24年度の実績で捕獲されたニホンジカは3万3668頭。このうち食肉処理されたのは1564頭で、加工された食肉は12・3トンにすぎず、流通もソーセージ類などの加工食品を除けば、レストランなどへの直接仕入れが大部分を占めており、一般消費者に生肉が届く仕組みはこれまでほとんどなかった。

 今回、一般消費者向けに生肉を販売する仕組みが出来上がったのは、業務用食品卸売業「ナガレイ」(長野市)が県内各所に散らばる22のジビエ処理加工施設から、シカの生肉や加工品を仕入れる流通の流れが構築できたため。

 県は昨年度、信州ジビエ研究会とともに、徹底したトレーサビリティー(流通履歴管理)や衛生管理のもとで加工処理されたシカ肉に対する認証制度を創設。ナガレイにはシカ肉の流通促進事業を委託しており、イオン店頭で販売される生肉は同制度で認定された3施設からのものに限られる。同室は「この流通の仕組みにより、消費者のジビエに対する安全性への懸念は払拭される」としている。

 ◆おいしく健康にいい

 シカ肉の販売にあたって、県は地域活性化の包括連携協定を結ぶイオン、野生鳥獣に詳しく県森林大使を務める作家のC・W・ニコルさんと連携。ニコルさんがシカ肉の料理レシピをイオンを通じて消費者に提案し、普及拡大を後押しする。

 イオンで販売される生肉はいずれも冷凍状態で、ロースとモモのブロック肉が200グラム1280円(税抜き)、煮込み用が同980円(同)。イオンを運営するイオンリテールの辻晴芳専務執行役員は「シカ肉は牛肉や豚肉に比べて高タンパク、低脂肪、低カロリーで鉄分が豊富。ヨーロッパではジビエとして注目が集まる食材で、シカ肉のおいしさをイオンから発信していきたい」と話す。

 ニコルさんは「森にダメージを与えているシカを減らさないと、生態系を崩してしまう。一方で捕獲したシカの95%を捨てている。ヨーロッパではシカ肉は貴族の食べ物。動物性脂肪が蔓延(まんえん)している日本人の食生活を改善するためにも、おいしいシカ肉を食べてほしい」と呼びかける。

 イオン11店舗では、認証生肉3種類を月間ベースで合計400キログラムの販売を計画。このほか、大和煮などの缶詰、カレーなどのレトルト製品、ソーセージなどの加工食品11種類も販売し、信州ジビエのブランド化を後押ししていく。

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