正論

橋下氏は敗北で何を勝ち得たか 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

 1つは、期待をつなぎとめ、反対勢力の壁を突破するためにいいこと尽くめにふくらませた大阪都構想が、実現には多くの困難が伴うものであることをなによりも一番よく知っていたのは橋下氏自身だったからではないだろうか。

 賛成多数で改革実施となれば、お祭り騒ぎのいけいけどんどんだけでは進まない。「堅い板に力をこめて徐々に穴をあけてゆく」(マックス・ウェーバー)ような地味で根気のいる仕事が待っている。そもそも額面が大きくなりすぎた改革手形をどう決済するのか。橋下氏はそのこともよく知っていたはずである。であれば、敗北は一面では安堵(あんど)でもあったのではないだろうか。

 もう1つは、勝利した都構想反対派も、住民投票の過程で府・市の改革は当然とするようになったことである。橋下氏は府と市の改革マインドを都構想反対派の政治家はもとより市民・府民に確実に刷り込んだ。そのかぎりでは完敗とはいえない。橋下氏の敗北後の言葉の清々(すがすが)しさは、このような感慨によるものではないだろうか。(たけうち よう)

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