正論

橋下氏は敗北で何を勝ち得たか 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

 ひるがえって橋下氏の知事・市長時代の改革となると、歴代の知事や市長よりも劣ってはいなかったにしても、目に見える大きな業績があったとは思われない。橋下氏の功績としては、なにかやってくれそうだという期待感をふくらませたことのほうが大きかった。

 この期待感の受け皿が大阪都構想という手形だった。維新の会を除いて大阪の党派はすべて反対派という状況で、住民の期待感をつなぎとめるために手形の金額を大きくふくらませることになった。

 二重行政を解消すれば、毎年4000億円以上の財源ができる(あとで撤回)という大風呂敷を広げはじめた。

 ところが、手形の額面がふくらめばふくらむほど、現実主義の住民は、そんなうまい話はないだろうと眉に唾をつけはじめる。高齢者は、何十年後の果実より、足元が不安になる。ムードによる脚光と期待はやがて現実主義に引き戻され、懐疑を呼び込む。

 ≪会見での清々しさが物語るもの≫

 それにしても住民投票の結果が判明したあとの橋下氏の記者会見のあの爽やかさはどうしてだろう。僅差にふれるわけでも、反対派に注文をつけるわけでもなかった。大変重く受け止める、僕が間違っていたということなど、まことに潔いものであった。敵対勢力を可視化させ、激しい言葉でののしった同じ人物とはとても思えない、美しい敗北の言で最後を飾った。これについては、次のように推察する。

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