正論

橋下氏は敗北で何を勝ち得たか 社会学者、関西大学東京センター長・竹内洋

 元祖ポピュリズム政治家の小泉純一郎元首相が抵抗勢力というくくりをつくって民意を動員したように、敵をつくりバッシングするのはポピュリズムの定石である。橋下氏の手法はそれにくわえて大阪ならではのものだった。長袖族(者)を敵に仕立てあげたからである。長袖族(者)とはもともとは袖の長い衣服を着る公家、僧侶、神職、学者などのこと。現代の長袖族は、学者や文化人、メディア関係者などがこれにあたる。

 ≪ホンネ主義と共鳴≫

 橋下氏は、メディアだけではなくツイッターなどを通じて、彼らを「くっちゃべっているだけの役立たず」などと執拗(しつよう)に糾弾した。

 文化産業従事者が多い東京とちがって、大阪は文化産業従事者が少ない。そのうえに、もともと直截な実用主義が強い所だから、目に見える効能がないにもかかわらず、ご意見番を自任し、上座を当然とする長袖族をうさんくさい輩と思っている。橋下氏はここらあたりの人々の隠れた反感をよくつかんで、長袖族攻撃などで民意を体現するスターの座を維持し続けた。「教育委員会のくそ野郎」というのもあった。過激すぎる罵詈(ばり)雑言だが、ホンネ主義の大阪では訴求力のあるパフォーマンスとなった。

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