秘録金正日(26)

病気の叔父押しのけ、長老らを籠絡「次世代に譲るべき」

 しかし、パルチザングループの中には、態度をはっきり表明しない者もいた。軍部に絶大な影響力を持つ呉振宇は、金正日の継母、金聖愛(ソンエ)の親族とも親しくしていた。呉は、聖愛が産んだ正日の異母弟、金平一(ピョンイル)に好感を持っていた。

 72年4月、還暦の祝いを済ませた後のある日、日成はパルチザングループの元老らを一堂に集めた。金一や崔庸健、崔賢、呉振宇、金英柱ら最高幹部たちだ。

 日成は「同志たち、解放を迎えたのが昨日のようだが、もう30年近くが過ぎようとしている。きょうは後継者問題について意見を聞きたい」と切り出した。「ソ連や中国を見ても(後継者問題は)対岸の火事ではない。一日も早く、対策を練ろうではないか。誰を後継者にすればいいか」

 崔賢が口を開いた。「首領様、それは当然、長孫(一家の跡継ぎの長男)でしょう。皆さん、そう思いませんか」

 正日を後継者とする提案に、表立って反対の声を上げる者はいなかった。同時にまた、積極的な呼応を得たわけでもなかった。=敬称略

(龍谷大教授 李相哲)

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