秘録金正日(26)

病気の叔父押しのけ、長老らを籠絡「次世代に譲るべき」

 ほかでもない申もプレゼントを贈られた一人だ。「正日が宣伝扇動部門を担当していた時代、映画や報道部門で、腕時計やテレビ、冷蔵庫などを受け取ったことのない幹部はいなかった」。正月には、部内の担当者のために宴会を開き、「帰りには、キジ3羽とイノシシの肉を土産に持たせてくれた」という。

 8歳で実母を亡くし、継母と厳しい父の下で少年時代を過ごした正日は、周りの機嫌を取るのを得意とした。敵とみなす人間には、容赦ない罰を与える一方、必要とする人間や身内には、相手が恐縮するほど、プレゼント攻勢を掛けた。

 父の戦友だったパルチザン世代の長老たち全員の誕生日を記録にとどめておいて贈り物を届け、盛大に祝った。パルチザン世代らは、気の利く演出を心憎く思いながら、正日に心を許していった。

 党5次大会を前後して、第1副首相の金一(イル)や党中央委副委員長の崔庸健(チェ・ヨンゴン)、民族保衛相の崔賢(ヒョン)ら重鎮は公の場で、金日成を前に「金英柱同志が完治できない病気を患っているなら、彼の職責は次の世代に譲るべきだ」と口にするようになる。効果はてきめんだった。

 71年4月、党第5期2次大会終了後に開かれた中央委政治委員会で、後継者問題が正式議題に挙がる。席上、英柱が正日を組織・思想担当党書記に推薦したとされる。

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