「読み始めたら止まらない」 山本周五郎賞に柚木麻子さん「ナイルパーチの女子会」

柚木麻子さん(岡本あゆみ撮影)
柚木麻子さん(岡本あゆみ撮影)

 第28回山本周五郎賞(新潮文芸振興会主催)に柚木麻子さん(33)の『ナイルパーチの女子会』(文芸春秋)が選ばれた。14日に都内で行われた選考会後に会見した選考委員の佐々木譲さん(65)が「圧倒的な筆力で、読み始めたら止まらないパワーがあった」と称賛。体調不良のため、電話で受賞会見を行った柚木さんは「賞をとれると思っていなくてかなり動転していますが、本当にうれしい」と喜びを語った。

 受賞作は、ともに30歳でキャリアウーマンの栄利子と主婦の翔子の2人を主人公に、女性同士の友情の切実さと難しさを描いた長編だ。タイトルのナイルパーチは、アフリカ原産の大型淡水魚で食用として重用される一方、放流されるとその水域の生態系を破壊する外来種としても知られる。

 「ナイルパーチは生き残るために凶暴になってしまう。同じようにしたくないのに競争を強いられるのは現代日本でもよくあること。水族館で説明文を読んでいるうちに、書きたいことが固まった」。人間の都合でナイルパーチが背負わされた宿命と、多くの女性たちが感じている「女友達がいなければダメ」という空気への違和感が交錯し、物語が生まれたという。

 直木賞候補になった『伊藤くんAtoE』『本屋さんのダイアナ』など、現代女性の心理描写に定評がある柚木さん。「女性の生きづらさのようなものを自分も感じているからかもしれないけれど、今後も女性の姿を書いていくと思う。それだけは確信があります」と明快に言い切った。