夜が退屈と言われがちな古都・奈良にかつて栄えた花街があるのをご存じだろうか? 古風な町家が並ぶ奈良町(奈良市街地)の一角にあり、京都・祇園にも負けないほど華やいだという「元林院(がんりいん)」。奈良町芸者、菊乃さんは衰退した街の復興を目指し、今春、新たな舞妓(まいこ)も見世出しした。菊乃さんの願いは元林院はもちろん、全国の伝統ある花街の文化を世界へ、未来へ伝えることだ。(聞き手 岩口利一)
--この道に入られたのは何かきっかけがあったのですか
菊乃 中学生のときに、元林院のお茶屋だった「つるや」を経営した叔母さんから「奈良に来て舞妓さんにならへん?」とお誘いを受けました。舞妓さんって何をするのか知りませんでしたが、「白塗りをして、日本髪を結って、着物を着て、座っとくだけでいいの」と言われ、軽い気持ちでこの世界に入りました。(卒業した中学校の)担任の先生2人と叔母との4人でタクシーに乗って奈良まで来ました。
--そのときのお気持ちは
菊乃 興味本位みたいな感じでした。勉強が嫌いでしたので、お稽古事をやってみたい気持ちはありました。就職する生徒は少ないので、担任の先生は心配してはったみたいです。