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大学図書館 「主体性養う場」に進化

【大学ナビ】大学図書館 「主体性養う場」に進化
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 ■情報ネットワーク使い双方向型学修

 図書館内に、学生たちが議論し、グループワークにも利用できるスペースを設ける大学が増えた。本を借り、必要な情報を得る従来型の図書館から、多様な情報源を駆使し、問題解決に取り組む「アクティブ・ラーニング(能動的学修)」の場に転換する。社会の求める「学力」の質が多様化する中で、学生の主体性を喚起する試みが広がる。(編集委員 平山一城)

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 アクティブ・ラーニング・スペース。文部科学省は、これを「複数の学生が集まり、情報資源(パソコンなど)を活用しつつ議論を進めていく学修スタイルを可能にする施設」とし、全国の国公私立大779校を対象に調査した。2014(平成26)年度は、全体の43・4%に当たる338大が「設置」とこたえ、2009年度(89校)から5年間で約4倍に増えていた(表)。この大半が図書館に設けられている。

 ◆新しいコンセプト

 玉川大(東京都町田市)に新設された「大学教育棟2014」は地上7階建て、延べ床面積2万3千平方メートルを誇る。キャンパスに点在していた図書館・講義室・研究室・大学事務室が一つにまとまり、1階から4階(一部)までの図書館エリアには、「ラーニング・コモンズ」という新しいコンセプトが施された。

 1、2階は専門的な資料や書籍を利用し、学生たちが「見る・調べる」ために活用する。そのため約100の個室と約200の学修席を配置した。3階をラーニング・コモンズの核とし、教員、卒業生などと知識を交換する場として機能するよう工夫した。4階に教学部やキャリアセンターなど支援施設、5・6階を講義室、7階を研究室とし、「講義室で学び、3階で討論、学修ルーム(席)で調べものをという、一連の流れをイメージした」という。

 ◆教員、学生が相互刺激

 「一人で学修するのも重要ですが、米国では、デジタル時代の情報資源を利用する公共の場としてインフォメーション・コモンズという理念が生まれ、ラーニング・コモンズに発展した。学生たちが集うだけでなく、そこで長い時間を過ごしながら自己啓発やそのヒントを得られる場、『滞在型図書館』という新しい施設を考えています」。河野均図書館長は力説する。

 2012年文部科学省の諮問機関、中央教育審議会は答申で、授業への出席率は高いものの、授業外の学修時間が少ない最近の学生の学力低下が指摘された。学士教育の質的転換が待ったなしとなり、「教員と学生が相互に刺激しながら成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し、解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)」を導入することが求められた。

 ICT(情報通信技術)が浸透するグローバル社会では、講義の予習・復習や読書量を増やすこともさることながら、授業や教材をデジタル化し、情報のネットワークを活用して双方向型の学修を高度化する必要に迫られている。その柱として、「学生の主体的な学修のベースとなる図書館の機能強化の重要性」がうたわれた。

 こうして新しいタイプの図書館が生まれるとともに、図書館員の仕事も従来の司書業務から、eラーニング(インターネットを利用した学修)やPC(パソコン)利用の支援、情報収集・リポート作成の指導にまで広がり、学内の他部署と連携した支援要員として位置づけられるようになった。

 ◆「学年担当司書」を導入

 小樽商科大(北海道)は2012年度から、学部4学年と大学院生それぞれの相談役となる5人の図書館員を選び、「クラスライブラリアン(学年担当司書)」とする制度を始めた。1学年500人強(院生は約100人)と比較的小規模だが、担当した学年が卒業するまで面倒を見ることで学生たちへの理解を深め、学修の進行に合わせて支援できるようにした。

 図書館のフェイスブックを活用し、各学年の担当者と連絡先を公開し、学生からの質問や相談を呼び掛ける。新入生を対象にした図書館ガイダンス、卒業論文の執筆に向けた卒論閲覧会など、各学年の学事に応じたイベント開催をはじめ、学生の希望に応じた図書の購入や資料調査まで任される。

 「ライブラリアンが学生たちと積極的に触れ合うことで、担当教員との協力関係も強まり、学生の情報活用力に合わせた支援が可能となる。図書館が大学における教育・学修支援の重要で不可欠な役割を果たすことを目的としています」(担当者)という。