ボディービル業界が競技人口の裾野を広げようと、ソフト路線を取り入れている。日本ボディビル&フィットネス連盟(玉利齊会長、JBBF)は、ほどよく丸みを帯びた筋肉を競う「メンズフィジーク」や女性の「フィットネスビキニ」などを新たに導入し、専門雑誌もできた。新競技は北九州市で6月にあるアジア選手権大会でも競技種目に採用された。(奥原慎平)
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俳優のケイン・コスギ氏ら有名人も登場する一見ファッション誌のようなボディービルの雑誌が、昨年5月に創刊された。「メンズフィジーク」の専門誌「PHYSIQUE MAGAZINE(フィジークマガジン)」だ。最新刊の第5号では発行部数が3割増えたという。
通常のボディービルは運動だけでなく、食事や睡眠など生活習慣も工夫し、筋肉を大きくする。ただ、「ムキムキ」と表現される肥大化した筋肉と、独特のポーズが敬遠されることも少なくなかった。
実際、JBBFの登録選手数も平成16年の1615人から、26年も2021人だった。国内のフィットネスクラブ会員数390万人(22年、経済産業省調べ)に比べると、ボディービル人口が広がりに欠けることは否めない。
そこでJBBFは、髪形や表情も審査されるなど、一般受けしやすいメンズフィジークやフィットネスビキニに目をつけた。
メンズフィジークは、筋肉の過度の発達や脂肪の絞りすぎは減点の対象となる。人気の「細マッチョ」「ソフトマッチョ」に近い体形だ。審査の際にはハーフパンツ姿で、リラックスしたままポーズを取る。
女性種目の「フィットネスビキニ」もバランスのとれたプロポーション、肌の色つやなどを審査する。
ともに米国発祥といわれ、2012年に国際ボディビル&フィットネス連盟(IFBB)が競技種目に採用したという。日本のJBBFも昨年8月、「第1回日本メンズフィジーク選手権大会」を大阪で開催し、全国から80人が参加した。
福岡県ボディビル連盟会長の水嶋章陽氏は「年齢を問わないトレーニングは健康維持に役立ち、ひいては国の医療費削減にもつながる。ボディービルが一部のマニアのみの競技から脱却することは、その一助となります」と、メンズフィジークの普及に期待を込める。
三島由紀夫にボディービルを教えた経験もあるJBBF会長の玉利氏は「海外で太刀打ちするためには、インテリジェンス(知性・教養)だけではだめ。三島氏のようなインテリもボディービルで体を鍛えた。メンズフィジークが入り口となって、体を鍛え、自信をもつ人が増えればうれしい」と語った。