現在の直木賞選考委員についても同じような傾向がみられる。当代きってのベストセラー作家、東野圭吾さんや林真理子さんをはじめ、早生まれが9人中5人とやはり多数派。早生まれ率は現在の芥川賞選考委員は88%超、現在の直木賞選考委員も55%超となるのだ。
早生まれは1年(12カ月)のうちの約3カ月だから、これは異常に高い率といえる。なぜなのか?
理由としてまことしやかに語られているのが、初等教育で目立つ身心の発育差に関する話だ。直木賞作家の角田光代さんは「WEB本の雑誌」の「作家の読書道」というインタビューで、自身の幼少期の体験をこう振り返っている。
〈私は早生まれなので、保育園に行くとみんなよりも小さくて。他の子ができることもできなくて、うまく喋れなくておしっこが言えなくておもらしするような子だったんです。それで、他とのコミュニケーションは取れないけれど、本を開いていればとりあえず時間が過ぎる、ということを知って、読むようになったんです〉
同級生との発育差によってコミュニケーションで挫折を味わう。結果、一人で没頭できる本の世界へ深く入る。豊富な読書経験が作家としての基礎を形づくっていく-。そんな構図が浮かびあがる。
「作家にはなりませんでしたけど、実は私も3月30日生まれで…」。「文学界」の武藤旬編集長も角田さんの指摘に理解を示す。
「内向的になりやすいというのはあるかもしれませんね。自分の場合、4月生まれの子とは丸々1年近く年が離れていた。小学校入学時のこの差はとても大きくて、運動能力の差は歴然としていた。とてもかなわないですよ。だから自然と一人でできることに目が向かう。当時はあまりゲームもないから本を読みましたね。そこから出版社への道は一直線につながっている気がする(笑)」