1月1日から4月1日に生まれた、いわゆる「早生まれ」。国内の作家の経歴をひもとくと、なぜかこの早生まれ率が高い、という話が文壇でささやかれている。明治から大正期にかけて活躍した文豪の夏目漱石(1867~1917年)と森鴎外(1862~1922年)はともに2月生まれ。日本人で2人目のノーベル賞作家となった大江健三郎さんと世界中に熱狂的なファンがいる村上春樹さんは1月生まれだ。これは偶然か、それとも必然か-。興味をそそる都市伝説の検証を試みた。
発信源は…あの作家?
この話題をユーモアを交えて取り上げたのが老舗文芸誌『文学界』(文芸春秋)平成27年1月号だった。
〈作家には早生まれが多いという説をよく耳にする。発信源は、一九六七年三月八日生まれの角田光代さんらしい。〉
同号巻末にある相馬悠々のコラム「鳥の眼・虫の眼」はそう筆をおこし、近年の早生まれ作家の増加ぶりを紹介している。
確かに江國香織さん(3月生まれ)、綿矢りささん(2月生まれ)など、最近の人気作家には早生まれが目立つ気もする。そうした傾向を裏付ける具体的なデータとして挙げられているのが、芥川賞と直木賞選考委員に占める早生まれ作家の多さだ。
現在の芥川賞選考委員は9人で構成されている。このうち宮本輝さん、島田雅彦さん、小川洋子さんが3月生まれ。村上龍さん、奥泉光さん、山田詠美さんは2月生まれ。さらに堀江敏幸さんは1月生まれで、川上弘美さんは4月1日生まれ。高樹のぶ子さんを除く実に8人が早生まれだ。確率にして約9割を占める。