プロ野球の野村克也、古田敦也、谷繁元信の3人に共通するのは、いずれも捕手出身で「名球会」入りを果たしている点である。さらに、もう一つ忘れてならないのが「選手兼任監督」の経験があることだ。野村が持つ最多出場記録(3017試合)に目前に迫る中日・谷繁は監督業をこなしながら現役選手を続けているが、自身の「立ち位置に」迷いが見受けられる。プロ野球には選手兼任監督の歴史が脈々と続くが、選手をやりながらの采配はぎこちなく、安定感に欠ける。いつの時代も兼任監督による「代打、俺」は話題にはなっても、そうは問屋が卸さない。
「監督業」へシフト
選手兼任監督2年目の44歳・谷繁。出場91試合だった昨季に比べて、今季はさらに監督業に重きを置く。ベンチで戦況を見守りながら機をとらえて代打で出場。犠打の場面で思わず力が入って、ベテランらしからぬ打席を披露する試合があった。プロ27年目。年齢的にも現役引退が近づく中で、指揮官として毎晩「針のむしろ」に座りながら選手として結果を出すことがいかに難しいか-。それは本人が最も身にしみて感じていることだろう。
幸い、大商大からドラフト3位で中日に入団した2年目の捕手、桂依央利(いおり)が4月21日、初打席初本塁打という強運を発揮した。ある時期、思うように投手に返球できなくなる「イップス」に悩まされたという新星がシーズン早々、正捕手争いに加わった。若手成長株の台頭は谷繁が最も望んできたことで、安心して監督業に専念できそうだ。